家族信託の活用例としては以下のものがあります。

(1) 認知症対策

財産の所有者自身がまだしっかりしている間に、子供など信頼できる人に財産の管理を委ねる信託を組むことで、その後に所有者が認知症等によって判断能力を失ったとしても資産凍結を防ぐことができます。 

(2) 空き家対策

認知症などにより判断能力が低下しても、後見人を選任せずに受託者によって空き家をスムーズに売却できます。また、委託者が急に亡くなったとしても登記簿上は受託者名義のため、相続登記をしないまま売却が可能です。売却したお金は受益者に入金されます。

(3) 共有対策

複数名の共有不動産について、信頼できる受託者一人に託すことで不動産の有効活用が可能です。

3分の1ずつの名義の共有者がいて、受託者に信託によって一本化することで不動産から収益が生じたり、売却して利益が出た場合は3等分して渡すこともできます。

共有者それぞれの方が認知症や相続が発生しても、受託者が単独で売却手続きを行うことが可能です。

他には、唯一の不動産を平等に相続させたい場合は、子供のうち誰か一人を当該不動産の受託者に指定し、収入を兄弟で分けるようにしたい場合など活用できます。

 (4) 二次相続、三次相続対策

本人死亡後の資産承継先を次の世代、さらに次の世代へ指定することができます。例えば、委託者亡き後は妻、妻亡き後は甥が財産を取得できるようにする。

(5) 事業承継対策

自社株式の議決権行使(経営権を残しまま)は本人が行いつつ、受益権としての財産的価値は長男に移して株式の承継ができます。信託を活用することでスムーズに事業承継が可能となります。