印鑑証明書

 司法書士が登記を申請する場合,添付書類として印鑑証明書が必要となることがあります。具体的には,売買や贈与による所有権移転や,抵当権設定などの際には登記義務者の申請意思を確認するために印鑑証明書を添付します。また、商業登記においては就任承諾書に添付する印鑑証明書や印鑑届書に添付する場合もあります。

 印鑑証明とは,正式な書類に使用する印鑑についてあらかじめ個人であれば市区町村役場,法人であれば法務局に印影を登録しておき,その印鑑が本人の印鑑で相違ないということを証明する制度です。原則的には,本人しか交付を受けられません。

 印鑑証明書は住所地の市区町村役場にて取得でき,法人の場合は法務局にて印鑑カードを使用して取得できます。

なお,有効期間3カ月以内の印鑑証明書の添付が必要となるケースとしては,所有権登記名義人が登記義務者として,登記を申請するときで例えば,所有権移転登記,抵当権設定登記などです。商業登記では印鑑届書に添付するものは、作成後3カ月以内のものとされています。

所有権以外であっても,登記識別情報を提供することなく,当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記を申請する場合には印鑑証明書が必要です。例えば,抵当権者が登記識別情報を不通知としていて,抵当権抹消登記をする場合などです。

また,所有権登記名義人が土地の合筆または建物の合併の登記を申請する場合についても有効期間3カ月以内の制限があり,これは原本還付請求をすることができません。

これらについて,有効期間が設けられているのは,印鑑証明を作成して長期間経過しているような場合,申請時点では紛失,盗難などにより,改印されていることもあるなど,本人の申請意思を確認できなくなるからです。

では,有効期間3カ月の計算はというと,例として平成29年1月28日で計算してみます。期間の計算は民法の規定によりますので,初日不算入の原則です。もし,その期間の開始が午前0時から始まるのであれば,期間開始の日を入れますが,印鑑証明書は役所で作成されますので,期間開始は業務時間から考えて午前0時から始まることはなく,1日の途中から始まります。

起算日は,平成29年1月29日からとなり,応当日は平成29年4月29日で,期間満了日はその前日の4月28日となります(民法第143条)。

もし,応当日が祭日や日曜日であれば,その翌日が満了となります(行政機関の休日に関する法律2条)。

例えば,平年の2月29日であれば,その月の末日の終了をもって期間満了となるため,2月28日となります。

他には,抵当権等の担保権(根抵当権及び根質権を除く)の債務者に関する変更・更正登記については所有権登記名義人が登記義務者であっても印鑑証明書の添付は必要ありません。

不動産登記において,印鑑証明書が他に必要となるケースとしては,私人の作成する書類に添付する場合で,遺産分割協議書や承諾書等に添付するときです。この場合,有効期間3カ月の定めはありません。

 印鑑証明書には,原本還付請求できるものとできないものがあり,申請書や委任状に押印した登記義務者の印鑑証明書や第三者の承諾書,同意書などに押印した印鑑証明書については原本還付請求できませんが,相続登記に添付する遺産分割協議書に添付した印鑑証明書については原本還付請求することができます。

 これは,登記の審査をする対象としての登記義務者等の本人確認に利用されるもので,最も重要な添付書面の一つでもあるため,登記完了後も原本を保管しておくべきとされているからです。

信託の登場人物

信託では,委託者,受託者,受益者といった三者が登場します。委託者とは,自分の財産を信託財産として,自らの財産から分離して信託する目的を定めて,その目的通りに財産を信託として設定するものです。
委託者は,財産を受託者に預け,受託者が信託財産を管理している間も,受託者を監督し,解任したり新しく選任したりもできます。
受託者とは,委託者から託された財産を自分の財産とは,分別して委託者の決めた目的に沿うかたちで,管理処分をします。そして,信託財産から生じた利益は,受益者に対して還元します。
なお,未成年者,成年被後見人,被保佐人は受託者になることができません。
受益者とは,信託財産から生じる利益を受けるものです。受益者は,委託者とともに信託を終了させたり,受託者の監督をし,選任や解任を行うことができます。受益者が,受託者の監視や監督をすることが難しい場合,信託監督人が選任されることがあります。
受益者のいない信託もあり,それは目的信託といいます。目的信託では,信託の存続期間が20年と制限されており,自己信託による方法もできません。
信託では,このように委託者,受託者,受益者の三者がいますが,これらはそれぞれ二者兼ねる場合もあり,委託者と受益者が同一人物ということもあります。
なお,委託者,受託者,受益者はそれぞれ単独ではなく,複数でも構いません。

電子消費者契約法

電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(以下,電子契約法という。)について

電子消費者契約とは,パソコンを使って一般消費者が事業者との間で電子商取引を行う契約のことをいいます。

内容としては,電子商取引などにおける消費者の操作ミスの救済と電子商取引などにおける契約の成立時期の転換というものがあります。

契約の成立時期の転換としては,まず,民法上の話しでいうと,意思表示については,相手が遠隔地にいるといった隔地者に対して,相手方に届いたときに効力が生じます。

これを到達主義といいまして,例えば,手紙を送った場合は,相手方に届いたときに効力が生じますので,ポストに配達された時,若しくは家の人に手渡されたとき等に効力が生じます。

一方,契約の成立時期は民法の原則では,契約の申込みに対する承諾の意思表示は,通知を発した時とあり,発信主義を取っています。

では,電子契約法ではどうかというと,インターネットを介した取引において,消費者と事業者間では,契約の承諾の意思表示も到達主義を取ることになります。消費者から契約の申込みをメールで送信した後,事業者が承諾の意思表示をメールにて行うと,消費者にメールが届いたときに契約が成立することになります。メールが消費者に届いたときとは,消費者がメールを見たときではなく,メールボックスに受信された時をいいます。

なお,改正民法案では,民法526条は削除され,全て到達主義に統一される予定です。

他方,電子商取引などにおける消費者の操作ミスの救済とは,消費者と事業者との電子契約では,インターネットを使用してアマゾンなどインターネット通販を利用して,商品を購入する際に,消費者がマウスなどの操作を間違ってクリックをして,意図しない申込みをした場合の規定です。

民法では,自分が契約したかった内容と違う契約をした場合,民法95条の錯誤による契約であったと無効を主張します。それでも,民法95条ただし書きで消費者に重大な過失があるとその売買契約は有効となってしまいます。そういったトラブルを防ぐ必要があります。

インターネットを利用して商品を購入する場面を想定してみます。
まず,ネット上の画面に商品が表示されます。この商品の画面は売買契約での申込みの誘引になります。ここで消費者が商品を指定して事業者に送信したら売買の申込みになり,事業者が承諾のメールを送信すれば売買契約の成立となります。(電子契約法4条では,この場合の承諾は,前述のように,民法526条1項の発信による契約成立の適用はなされず,消費者に対してご注文ありがとうございましたと事業者が返信すれば,それが承諾となります。)

そして,この売買契約の流れで消費者が誤って違う商品をクリックして申込みをしたとすると民法95条の要素の錯誤に該当します。要素の錯誤に該当する意思表示は原則無効となりますが,民法95条但し書きにより,重大な過失がある場合は有効となります。つまり,パソコンのマウス操作を誤ったということは重大な過失となり,売買契約は有効だと事業者から主張されてしまいます。しかし,電子契約法3条により,民法95条但し書きは適用されないとされていますので売買契約は無効となります。

ただし,常に無効というわけではなく,消費者が申込みを行う前にその申込み内容などを確認する措置を事業者が講じない場合に限られています。どんな措置かといいますと,申込み内容を確認する画面で,商品の名称や個数,代金額などの契約内容が画面に表示されるような措置です。消費者がそれを確認して「はい」を押すと申込みとなります。

これは,インターネットによる契約の申込みや承諾の意思表示を行う意思の有無について,確認を求める措置を事業者が講じたのであれば,民法の原則に戻るということで,つまり,重過失により無効とは認められない可能性があるということです。消費者は,しっかりと確認画面を見て,よく確認してから意思表示をしなければなりません。