墓地は系譜,祭具とともに祭祀財産とされていまして,相続財産からは除外され,遺産分割協議の対象とはならず,祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。

祭祀財産の所有者が死亡した場合の承継は,被相続人の死亡に伴い法律上当然に承継されることになります。この祭祀財産の承継は,放棄したり,辞退することもできないとされており,承継したとしても相続分や遺留分算定には加えられません。

なお,墓地,墓石,仏壇,仏具や位牌など祖先を崇拝する相続人等の心情に配慮され,相続税は非課税とされています(相続税法第12条第1項第2号)。登記では墓地については,登録免許税法第5条第10号で非課税となります。

墓地の場合,固定資産税も非課税とされているため,相続があっても登記されずにそのままとなっていることがあります。相続登記の遺漏を防ぐためにも,固定資産評価証明書や名寄帳,権利証なども調べた方がいいです。

相続が発生した場合,墓地の登記手続きとしては,相続を原因とする所有権移転登記をするか,民法第897条による承継を原因として所有権移転登記をするかの二つの方法があります。

墓地は祭祀財産であるため,民法第897条による承継を原因として所有権移転登記をするのが原則ですが,登記上は墓地であっても,第三者に墓地として貸していたりする場合,その土地の所有者が亡くなっても祭祀財産に含まれないということになります。

この場合,自分の祭祀財産か否かを証明しなくとも,相続を原因とした所有権移転登記も受理されるとされています(昭和36年3月24日民三第282号,昭和35年5月19日民事甲1130民事局長回答)。
相続を原因とした所有権移転登記の場合,通常の相続登記と同じ手続きになります。
一方,民法第897条による承継を原因とした場合,原因日付は,被相続人の死亡日となります。

そして,遺贈に準じた扱いであり,登記権利者は祭祀財産を承継する者で,登記義務者は相続人全員,若しくは遺言執行者が選任されていれば遺言執行者との共同申請により登記をします。そのため,登記原因証明情報と登記識別情報(登記済証),登記義務者の印鑑証明書や祭祀承継者の住民票写しなどが添付書類として必要となってきます。

祭祀財産の承継人としては,まずは被相続人の指定,もし指定が無ければ慣習,そして慣習が明らかでなければ家庭裁判所の審判により決定されます。
被相続人による指定方法としては,生前に口頭や書面,明示,黙示を問わず,遺言によっても指定してもよいとされています。