自己破産の同時廃止と管財事件

 自己破産の目的としては,債権者のために財産を清算する破産手続と債務者の支払を免除させる免責手続きがあります。
自己破産の手続きは,破産管財人による手続かどうかによって同時廃止と管財事件に分けられます。
債務者に破産手続に必要な費用が無いような場合,破産手続を進めても債権者に財産を配当することができません。このような場合,破産管財人は選任されず破産手続の開始決定と同時に破産手続を終了させます。これを同時廃止といいます。同時廃止では破産手続がすぐに終了し,後は免責手続きが進行していくことになります。
破産手続を始める開始決定と同時に,破産者の財産が少ないため,破産手続の費用さえ支払えないことから手続きを終了させる廃止決定とが同時にされるため,同時廃止といいます。
一方,管財事件では,破産者に不動産や預金など財産が残っているような場合,破産手続開始決定と同時に所有している財産を処分し,債権者へ配当するため破産管財人が選任されます。そのため,破産管財人に対する報酬が必要となり,管財事件の方が同時廃止に比べて費用が割高になります。破産管財人は,破産者の財産を管理して換価し,債権者に配当しますが,破産者が財産を隠していないかなども調査します。
なお,債務者に資産がない状態であっても,資産の調査が不十分であるか,免責不許可事由(免責できない事情があるとき)がある時にも管財事件になります。他に,破産の申立時点で財産が無くとも,生命保険の解約返戻金や過払い金などがある場合,管財事件となるケースもあります。
管財事件となりますと,同時廃止とは異なり,破産手続は終了せずに継続していきます。
管財事件の場合,破産管財人によって破産者の財産などの調査を行うため,裁判所の許可により郵便物が破産管財人のもとへ転送されます。他に,破産者は裁判所の許可が無ければ転居や旅行ができないとされています。
管財人は,債権者集会を開いて破産者の財産などを報告する集会を開き,債権者に対して配当が終了し,裁判所は破産終結の決定を行って,破産手続が終了します。管財事件の場合,同時廃止よりも手続きが複雑であり,手続期間も長くなってしまいます。
なお、免責不許可事由には財産の隠匿、損壊、不利益処分、財産価値の不当な減少行為、担保の供与又は債務の消滅行為(偏頗行為)、浪費又は賭博、その他の射幸行為による著しい財産減少などあります。