相殺とは

相殺とは債権者と債務者とがお互いに同種の債権と債務を有する場合に、その債権と債務を対当額にて消滅させる一方的な意思表示をいいます。例えば、AがBに対して100万円の貸金債権があり、反対にBからAに対して120万円の貸金債権があれば、100万円の限度においてお互いの債権、債務を消滅させることができます。
この場合、相殺する側の債権を自働債権、相殺される方を受働債権といいます。
相殺には担保的機能というものがあり、例えば金融機関では定期預金の額までは貸付ができたりしますが、これはもし返済ができなければ、この預けている定期預金によって相殺をすることで優先弁済を受けるということになります。

破産における相殺

破産手続きにおいても相殺ができるケースとして破産法第67条第1項に規定されています。これによると、破産債権者は、破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで、相殺をすることができると規定されています。

破産債権を自働債権として、破産債権者が破産者に対する債務を受働債権とする相殺を原則として認めています。上記の相殺の担保的機能から導かれます。
しかしながら、全ての場合に相殺を認めてしまうと債権者平等の原則に反してしまいます。
そこで、相殺ができない場合を破産法第71条、第72条で定めています。これらによりますと、破産手続開始後に破産財団に対して債務を負担したとき、債権者が債務者の破産手続開始後に債務者に対して取得した債権での相殺や債務者が支払い停止の状態にある、または、破産手続開始後にこれを知って債権者が債務者に対して取得した債権など破産手続において相殺が禁止されています。