会社の解散と清算手続き

会社には,法人格がありますがそれが消滅する場合として解散があります。解散の方法には清算手続きと破産手続きがあります。
例えば,会社の場合,次の事由によって解散します。
定款で定めた存続期間の満了,定款で定めた解散事由の発生,株主総会の特別決議,合併,破産手続開始の決定,休眠会社のみなし解散などがあります。
清算手続きをしている会社というのは,会社を消滅する手続きをしているわけですから,その目的以外の行為など行うことはできないとされています。
これは,清算株式会社というのは,清算の目的の範囲内において清算が結了するまで存続するとみなされているからです。
では清算手続きに入ると会社はどうなるのかといいますと,その会社の取締役だった者は地位を失い,代わりに清算人が選任されて清算手続きを行っていきます。この清算人は解散時の取締役がそのまま就任することが多いです。

会社の破産手続き

会社の破産手続きというのは,会社が債務の支払不能や債務超過の状態で,裁判所の決定により開始されます。一般的には裁判所が選任した破産管財人が会社の財産を換価して,これを債権者に分配をしていきます。
破産手続きでは,開始と同時に会社の財産処分権限は破産管財人に移行し,その後も破産管財人によって手続きが進められていきます。会社の実印や通帳関係など破産管財人が管理をします。
個人の破産手続きにおいては,同時廃止が多いとされていますが,同時廃止というのは破産手続開始の決定と同時に破産手続きを廃止する決定をするということです。破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき(破産法216条1項)をいいます。
同時廃止に対し,異時廃止というのがありますが,これは破産管財人が選任され,破産手続費用を支弁するほどの破産財団を形成できないということで,破産管財人の申立てにより又は職権で裁判所が破産手続廃止の決定をするというものです。
破産手続きが終了すると終結又は廃止決定により会社の権利義務は消滅することになります。

抵当権者が破産している場合

不動産の抵当権抹消を行う際,抵当権者である会社が破産手続開始決定を受けている場合は,破産管財人が登記義務者として抵当権抹消登記を行います。
もし,破産後の日を抹消原因日付として解除や放棄を原因とするのであれば,破産法第78条2項12号でいう権利の放棄であり,破産財団の財産を減少するため裁判所の許可書が添付書類として必要になります。
この裁判所の許可書を添付するのであれば,抵当権抹消登記で登記識別情報は必要ないとされています(昭34・5・12民甲929)。

不動産に抵当権が設定されており,その抵当権者の商業登記簿を調べますと破産宣告がされ,○○地方裁判所の費用不足による破産手続廃止の決定と登記がされていました。
破産した会社が抵当権者であった場合,会社が異時廃止によって法人格が消滅して商業登記簿が閉鎖されていたのです。
最高裁昭和43年3月15日の判例によると,株式会社が破産すると取締役との委任関係は終了し,定款または株主総会決議により取締役以外の者を清算人としない限り,利害関係人の請求により裁判所が清算人を選任するとしています。
利害関係人の申立てにより裁判所が清算人を選任しますと,閉鎖登記簿の登記記録を復活し,清算人の登記がなされます。この場合,年月日復活と登記がされ,その後に清算人の事務が終了すると,清算人の選任決定の取消がされます。

例えば「年月日○○地方裁判所の清算人選任取消決定」と登記がなされ,登記簿が閉鎖されます。
なお,清算人選任申立ては清算株式会社の本店所在地を管轄する地方裁判所によって行われます。ケースバイケースですが,清算人を選任することで高額の予納金がかかるのであれば,特別代理人を選任して清算株式会社を相手に抵当権設定登記抹消登記手続きを行う方法も検討します。