遺言と異なる遺産分割協議

 遺言があったとしても、相続人全員の合意があれば遺言と異なる遺産分割協議も可能です。家庭裁判所の実務においては、共同相続人全員(受遺者も含む)の合意と遺言執行者の合意があれば、遺言と異なる遺産分割調停も可能と解されています。

 遺言書通りに相続することで相続人間での争いが生じてしまうような場合や税務上の問題が生じてしまうことなどもあり、遺言と異なった遺産分割をするケースも考えられます。

 また、民法907条、908条より遺言によって遺産分割方法が指定されていたとしても、遺産分割が禁止されていない限り、相続人はいつでも協議によって分割ができます。

被相続人は、遺言で相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができます。

 しかしながら、遺言で一定期間遺産分割が禁止されていたとしても、共同相続人全員の合意があれば遺産分割をすることが可能であると解されています。

 相続人間の遺産分割協議によって遺産の分割が可能とされていても、遺言執行者がいる場合は、相続人は遺産に対する管理処分権を失い、遺言執行者が管理処分権を有します。

 遺言執行者は、相続人全員の合意があったとしても遺言に基づいた内容で執行することができるのです。

 そして、相続人や受遺者全員が遺言と異なる遺産分割を行うことに同意された場合、遺言執行者もそれに従うことが可能で遺言執行者の同意の下にした処分行為は、民法1013条に反せず有効であると考えられています(東京地判昭和63年5月31日)。

 ただし、遺言執行者は、遺言作成時に遺言者から依頼を受けていたと考えますと、原則としては遺言と異なる内容の遺産分割協議に応じる義務はなく、遺言の内容を実現すべく遺言執行をすべきといえます。

 

民法

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