商業登記における添付書面等の押印の要否について

脱ハンコの流れから、行政手続きにおける押印の見直しを求められ、商業・法人登記手続についても押印規定の見直しがされました(令和3年1月29日付け法務省民商第10号民事局長通達)。。

 

(1)押印を要する書面

定款や取締役会議事録、取締役の一致があったことを証する書面等、法令の規定により押印又は印鑑証明書の添付を要する書面について引き続き押印が求められます。
・原始定款(会社法第26条第1項)
・取締役会議事録(会社法第369条第3項)
・取締役会を置かない株式会社において作成される取締役の一致があったことを証する書面(令和3年1月29日法務省民商第10号通達)
・就任を承諾したことを証する書面(商業登記規則第61条第4項、第5項)※ただし、再任の場合を除く。
 取締役会設置会社・・・代表取締役の就任承諾書
 取締役会非設置会社・・・取締役の就任承諾書
・印鑑を提出している代表取締役若しくは代表執行役又は代表取締役である取締役若しくは代表執行役である執行役の辞任を証する書面(商業登記規則第61条第8項)
・清算人会議事録(会社法第490条第5項、第369条第3項)
・登記された事項につき無効原因があることを証する書面(令和3年1月29日法務省民商第10号通達)
・その他法令の規定により押印を要する書面


(2)押印を要しない書面

株主リストや資本金の額の計上に関する証明書等、法令上、押印又は印鑑証明書の添付を求められていない書面については押印の有無について審査を要されないものとされました。


・主要な株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(いわゆる株主リスト)(商業登記規則第61条第3項)
・資本金の額の計上に関する証明書(商業登記規則第61条第9項)
・金銭の払込みがあったことを証する書面(商業登記法第47条第2項第5号)
・取締役、監査役、執行役等の就任承諾書(商業登記法第47条第2項第10号、第54条第1項)※商業登記規則第61条第4項及び第5項の規定の適用を受けない場合
・辞任を証する書面(商業登記法第54条第4項)※商業登記規則第61第8項の規定の適用を受けない場合
・株主総会招集期間を短縮する場合の同意書(商業登記法第46条第1項)
・失権予告付催告期間を短縮する場合の株主の同意書(商業登記法第46条第1項)
・募集株式又は募集新株予約権の引受けの申込みを証する書面(商業登記法第56条第1号、第65条第1号)
・募集株式又は募集新株予約権の総数引受契約を証する書面(商業登記法第56条第1号、第65条第1号)
・新株予約権の行使があったことを証する書面(商業登記法第57条第1号)
・取得請求権付株式の取得請求があったことを証する書面(商業登記法第58条)
・吸収合併契約書(商業登記法第80条第1号)
・添付書面の還付を請求する際に作成する謄本(商業登記規則第49条第2項)
・本人確認証明書として添付するための運転免許証等の謄本(商業登記規則第61条第7項)

※商業登記規則第49条第2項及び第61条第7項の各謄本には押印は要しませんが、原本と相違がない旨の記載及び記名は引き続き必要ですので御注意願います。

 司法書士としては、誤りのない登記のためにも委任状や議事録等の書面については原則として押印をお願いすることになります。