資本金の額の減少

資本金の額は、設立または株式の発行に際して株主となる者が払込みまたは給付した財産の総額です。これら払込みまたは給付した額のうち2分の1を超えない額は資本準備金とすることができます。
ところで、資本金や資本準備金というのは会計上の科目で資本金は会社に対して株主が払い込んだ金額であり、増資の際には2分の1を超えない額を資本金でなく資本準備金として積み立てておくことができます。
そして、資本準備金としない資本金の減少額は、その他資本剰余金となります。

資本金の額の減少は大会社になるのを避けるためや、欠損の填補、損失の処理または剰余金の配当の原資に充てられることが多いですから、実際には資本準備金とする例は少ないと思われます。

増資と異なり、資本金の額を減少することを一般的には減資といいます。減資をした場合は変更登記を申請しますが、減少した資本金の額を準備金として計上したとしても準備金の額は登記事項ではないため、変更登記は必要ありません。
資本金を減少させる場合、株数の減少を伴わない場合は通常の減資手続きです。もし、株数を減少させたい場合は株式併合・株式消却の手続きが行われます。

減資をした場合、欠損填補等をすることで分配可能額が増加し、剰余金の配当によって会社の財産が減る可能性もあるため、増資の場合と異なり出資者や債権者に対する保護手続きが必要となってきます。
債権者保護手続きには時間がかかってくるため、事業年度末の前に減資を行う際は債権者保護手続きのスケジュールも検討することが必要です。
ところで、欠損とは剰余金のマイナスであり、欠損填補とは資本金や資本準備金で剰余金のマイナスを埋める損失処理をいいます。

資本金の額の減少に係る決議

株式会社は、資本金の額を減少する場合、原則として株主総会特別決議によって減少する資本金の額、減少額の全部または一部を資本準備金とするときにはその額、資本金の減少が効力を生ずる日を定めなければなりません。
もし、株式の発行と同時に資本金を減少する場合で効力発生日の資本金の額が結果として減少しないときは取締役会設置会社では取締役会決議、取締役会を置かない株式会社では取締役の決定によります。
なお、「定時」株主総会において決議する場合で、減少する資本金の額が欠損の額を超えないときは、株主総会普通決議によることができます。

決議機関に関わらず、資本金の額の減少に際しては、前述のとおり、次の事項を定めます。
1 減少する資本金の額
2 減少する資本金の額の全部または一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額
3 資本金の額がその効力を生ずる日

債権者保護手続き

株式会社や特例有限会社が資本金の額の減少を株主総会決議で承認した場合、異議のある債権者は、一定の期間内に異議の申立てを行うよう必ず官報にて公告しなければならず、かつ知れている債権者に対しては個別に催告をしなければなりません。公告期間は1か月必要です。

ただし、電子公告や日刊紙など、官報以外の公告方法を定めている株式会社が官報公告のほか日刊新聞紙、電子公告により公告した場合は債権者に対する個別催告は不要となります。

債権者が異議を述べることができる期間を1か月以上は設けなければなりませんので、決算前に減資の手続きを行う際はスケジュールに関して要注意です。

もし、資本金の額の減少について債権者が異議を述べた場合には、次のいずれかの手続きが必要となります。
1 債権者に対する弁済
2 債権者に対する相当の担保の提供
3 債権者に弁済を受けさせることを目的とする信託
ただし、異議を述べた債権者を害するおそれがない場合には、これらの手続きをとらなくても構いません。

知れている債権者に対する各別の催告

もし、会社に知れている債権者が存在しないときは、知れている債権者に対して催告をする必要はありません。この場合、催告をする必要がないことを証明するため、知れている債権者が存在しない旨の証明書を添付すれば足ります。

知れている債権者に対して各別の催告をした場合
催告をしたことを証する書面として、債権者に対する催告書の控えに債権者名簿を合綴したものを添付するのが一般的です。知れている債権者が少数で、各催告書に個別の債権者の氏名を記載したときは、催告した人数分の催告書の控えを添付するようにします。

 

資本金の額の減少について効力が生じますと、資本金の額の減少は、完了となりますが、2週間以内に変更登記の申請を行います。この場合、登録免許税は金3万円(ネ区分)必要です。