消費者被害に遭った場合、特定商取引法でのクーリング・オフが使えればいいのですが、もしクーリング・オフが行使できない場合、別な方法で解決を目指します。
民法上は詐欺や強迫、錯誤による取消がありますが、実際は民法上の詐欺や強迫に該当することを立証するのは困難なことがあり、取消しができないとなると問題です。
消費者契約法では、事業者による不適切な勧誘などによって消費者が誤認や困惑したことにより契約をした場合、消費者取消権によってトラブルの原因となる契約を取消すことを規定しています。

消費者契約法第4条

これには、事業者が消費者に誤認を与える行為、消費者が困惑する行為、必要な分量などを著しく超えた商品やサービスの提供を勧める過量契約によってなされた契約などを取消すことができます。
消費者に誤認を与える行為としては不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知があります。また、消費者が困惑する行為には不退去、退去妨害、退去困難な場所への同行、威迫による相談妨害、不安の告知、好意の感情の不当な利用、判断力の低下の不当な利用、霊感などによる知見を用いた告知、契約締結前の現状変更があります。

消費者取消権

取消権を行使しますと、当該契約ははじめから無効なものであったことになります(民法第121条)。事業者、消費者ともに履行されたものがあればそれぞれ返還する義務を負い、未履行のものについては履行しなくてよくなります。
しかし、民法121条の2第1項では、無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けたものは原状回復義務を負うとしています。
そうなりますと、消費者がもし受け取っていた商品を消費していますと、取消した時に消費した分を返還しなければならなく不当な結果となります。そのため、消費者契約法第6条の2で消費者が消費者契約法第4条第1項から第4項までの規定により取消した場合、給付の時に取消原因があると知らなかった消費者の返還義務を現存利益としています。
なお、取消の効果は善意の第三者に対抗できません。