概要

支払督促とは、簡易裁判所の裁判所書記官を通じて債務者に対して行う手続きです。債権者に簡易迅速に債務名義を得させることができますが、どんな場合にでも利用できるわけではありません。
利用できるケースとしては、金銭その他の代替物又は有価証券の一定数量の給付を目的とする請求で金銭などの支払請求に用いられます。金銭債権であれば、貸金でも売掛金でも利用できますが、中古車を購入したのに引き渡してくれないといった引渡請求など利用できない場合もあります。
他に、債務者が日本に居住していない場合や債務者の住所(生活しているところ)が分からない場合にも支払督促ができません。

  申立の方法

請求の価額にかかわらず、債務者の普通裁判籍所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して申立てをします。なお、支払督促の発付において証拠調べは行われません。
支払督促に貼付する印紙としては、通常の訴訟の半額です。

支払督促の申立書には、当事者や法定代理人、請求の趣旨および原因を記載して、当事者目録を作成します。
支払督促の申立書には、請求の原因として、請求を特定するのに必要な事実を記載すれば足りるとされていますが、それに加えて債務者が不服の有無を判断するための事実として、支払済みの額や最後に支払った日等も記載しています。

 手続きの流れ

支払督促の正本が債務者に送達されてから2週間以内に債務者から督促異議の申出がなければ、その2週間目の翌日から30日以内に仮執行宣言の申立てをする必要があります。
もし、この30日の間に仮執行宣言の申立てをしないときは、支払督促は効力を失いますので要注意です。
そして、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促に仮執行宣言を付してくれます。
なお、債務者は、支払督促正本を受領した日から2週間を経過しても、仮執行宣言が発付されるまでは、仮執行宣言前の督促異議を申し立てることができます。

次に、申立人と債務者に仮執行宣言付支払督促が送達されます。
そして、仮執行宣言付支払督促の送達後2週間以内に、督促異議の申立てがないとき、又は督促異議の申立てを却下する決定が確定したときは、督促手続は終了し、支払督促は確定判決と同一の効力をもつことになります。
確定判決と同一の効力をもつといっても、支払督促は、債権者の主張事実について実体的な判断をしているわけではないことから、執行力はあっても既判力はないとされています。

強制執行の申立て

債権者は、その仮執行宣言付支払督促正本とその債務者に対する送達証明書により執行文の付与を受けずに強制執行の申立てができるようになります。
送達証明書は、仮執行宣言付支払督促を発付した簡易裁判所にて申請することで得られます。