募集株式の発行

株式会社は、当初の資本金を元手に事業を行っていくわけですが、その後に外部から資金を調達することがあります。資金調達の方法には、借入をする以外に増資として株式を発行する場合があります。

株式会社の資本金を増やすことを増資といいますが、新株発行に伴う資本金の増加を募集株式の発行といいます。 募集株式の発行をしますと、発行済株式の総数並びに種類及び数と資本金の額が増加しますので変更の登記が必要となります。

募集株式の発行では、公開会社か公開会社でない株式会社によっても決議機関が異なってきます。 会社法では、発行する株式の全部が譲渡制限株式である株式会社を公開会社ではない株式会社(非公開会社)といい、単一の株式が譲渡制限株式のみの会社や全種類の株式が譲渡制限株式の種類株式発行会社が該当します。

これに対して、公開会社は発行する株式の全部に譲渡制限がないものや、一部の株式が譲渡制限株式でない株式会社も含まれます。

株主割当と第三者割当

なお、募集株式の発行には株主割当と第三者割当とがあります。 株主割当とは、株式発行の際に現在の株主に対して、株式を割り当てることをいいます。 第三者割当は、株主割当以外の募集株式発行の方法をいい、現在の株主以外への割当だけでなく、既存の株主に対して持株比率でない割当で発行を行う場合も含まれます。 例えば、A(株式70株)とB(株式30株)の株主がいる株式会社で、Aに30株、Bに70株を割り当てたり、AだけやBだけに株式を割り当てるものは株主割当にはなりません。

そして、募集株式の発行に際しては、募集事項を決めて、その決める機関はどこなのかも確認していきます。 パターン分けをしていきますと、株主割当か第三者割当かの二つで分け、次に公開会社かそれ以外の会社か、有利発行に当たるのか否かによっても検討していきます。

募集事項

募集株式を発行するにあたり、募集事項の内容を決定します。具体的には、①募集株式の数、②募集株式の払込金額、③金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨ならびに当該財産の内容及び価額、④募集株式と引換えにする金銭の払込みまたは金銭以外の財産の給付の期日またはその期間、⑤増加する資本金及び資本準備金に関する事項などを決定します。

募集事項の決定機関

(1)公開会社 公開会社における第三者割当のケースであれば、原則として取締役会が募集事項を決議します。有利発行の場合は公開会社であっても株主総会の特別決議が必要です。 公開会社における株主割当では、取締役会にて決議します。

(2)公開会社でない株式会社 公開会社でない株式会社の場合は、既存の株主に不利益を及ぼす可能性があることから、原則として株主総会特別決議によって決議をしていきます。 第三者割当のケースでは、株主総会による委任があれば、取締役会・取締役の決定によります。 株主割当の場合はといいますと、定款の定めがあれば取締役会・取締役の決定によります。

募集事項の通知等

次に、募集事項が決定されれば、募集事項の通知が行われます。 募集に対する申込に対して、会社は募集株式を割り当てて、これに応じて引き受けがされ、払込期日または払込期間内に出資の履行がされれば、株式の引受人は株主となります。

株主割当の場合

株主割当の場合、株式会社は、募集事項等を決定した後、引受けの申込期日(払込期日ではない)の2週間前までに株主に対して①募集事項、②当該株主が割当を受ける募集株式の数、③申込期日の通知が必要となります。株主割当の場合、公開会社か非公開会社にかかわらず2週間の期間を要します。 募集に対する申込みに対し、会社が募集株式を割り当て、これに引受人が払込期日または払込期間内に出資の履行をすれば、引受人は払込期日が定められている場合は払込期日から、払込期間が定められている場合は出資の履行をした日から株主となります。

公開会社が第三者割当を行う場合

公開会社では、株主に発行を差止める機会を与えるため、払込期日または払込期間の初日の2週間前までに株主に対し、募集事項を通知するか公告しなければなりません。「公開会社」では募集事項を決定した日と払込みの期日・払込みの期間の初日との間に2週間の期間が必要となるのです。

 募集株式の申込み

募集に応じて株式の引受けの申込みをするものは引受けの申込みを証する書面として株式申込証等を交付します。これは、株主割当でも第三者割当でも添付が必要となります。 または、総数の引受契約を締結した者は、引き受けた募集株式の数について募集株式引受人となります。総数引受契約書を交わすことで、申込みおよび割当の決定は不要となり、引受けの申込みを証する書面も不要となります。

総数引受契約の場合、発行する株式が譲渡制限株式であるときは、株主総会の特別決議(取締役会設置会社においては取締役会)の承認が必要となりますので要注意です(会社法205条)。

もし、非公開会社で取締役会が設置されていますと取締役会議事録が登記申請の際に必要となります。また、定款で別段の定めを設けたとしても定款の添付が必要となれば添付書類が増えてしまいます。

払込みについて

募集株式の引受け人は、払込期日または払込期間中に出資の履行をしたときは、払込期日が定められている場合は払込期日から、払込期間が定められている場合は出資の履行をした日から株主となります。 そのため、払込期日を定めた場合、期日前に払込をしたとしても当該払込期日に株主となります。

また、払込期日は「期日」のため「期間」とは異なり民法142条の適用はなく、払込期日を日曜など休日としても期日が伸長されることはありません(昭和28.12.28民甲2571)。払込期日を日曜や祝祭日としても払込期日に株主となります。

払込期間の場合はというと、募集株式の引受人は、その期間中、出資の履行をした日に株主となります。変更の登記はというと、各払込み及び各出資の全体をまとめて、当該期日の末日より2週間以内に登記申請をすることができます。例えば、3人の株主がそれぞれ各日に出資の履行をした場合、払込期間の末日を効力発生日として、3日分をまとめて登記申請をすることができます(会社法第915条2項)。

発行可能株式総数

募集株式を発行する際は、発行可能株式総数の範囲内で行わなければなりません。もし、枠外発行となるのであれば発行可能株式総数を変更する必要があります。 例えば、募集株式の募集事項の決議をした時点で枠外発行となるのであれば、枠外かどうかは募集株式の効力発生日で判断されます(昭32.6.27民甲1248号)ので、払込期日より前に発行可能株式総数の増加変更を行います。

 添付書面

(1)募集事項を決定した株主総会議事録や取締役会の議事録

(2)株主リスト

(3)募集株式引き受けの申込み又は総数引受契約を証する書面

(4)払込みがあったことを証する書面(一般的には会社名義の銀行口座へ払込)

(5)資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面

(6)現物出資があれば、検査役の調査が必要かどうか、有価証券の市場価格を証する書面など (7)委任状

 登録免許税

資本金の額の増加分に1000分の7を乗じた金額です。ただし、この額が3万円に満たない場合は3万円になります。 もし、計算した結果、100円未満の端数があるときは、その端数金額は切り捨てます。

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